―キミは肉なのか味噌なのか、一体どっちなんだい。
僕がそう問いかけると、彼はやや自虐的な笑みをたたえ、こういった。
「ほんとに、一体どっちなんでしょうかね。自分でもわかりません」
ただ、表情とは裏腹に
―その言葉には誇らしげな、矜持すら感じることが出来た。
彼、肉味噌は、肉でもあろうともせず、味噌でもあろうともせず、
かといって、肉味噌として高らかに自己主張をするまでもなく…
ただひたすらに、求められるがままに、ただの肉味噌であり続けた。
多くの人々が、少しでも自分を大きく見せるがために手練を弄し、
何かとつけて人様の褌で懸賞を得んと画策する。
そんな現代において、一体どれだけの人が、彼、肉味噌のように在ることができるだろうか。
彼は、その最期…僕の口腔においても、肉でもなく、味噌でもなく、
ただ甘く、ただ辛く、適度な歯ごたえと、麹の香りを遺し…
たくさんの白米とともに、消えていった。
肉味噌、あゝ肉味噌。
きっと、また会う日まで。