【2日目】丹沢表尾根・一泊縦走 – 単独

7月18日。丹沢一泊縦走・二日目。

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昨晩、星をみるために起き出してからしばらくは眠りにつけなかったのですが、いつの間にか寝ていたようです。窓の外が明るくなってきたのと、まわりの宿泊客の方がガサゴソしだしたことで目が覚めました。

時刻は4時。ちょうど空が明るんでくる時間です。すぐに起きて、荷物を全てザックに詰め込み、日の出を見るために外へ。ちなみに、起き上がるとき天井が低いのを忘れていて、思いっきり頭をぶつけました。

日の出

外へ出ると、西には富士山、東には明るみはじめた空。夏なのに、まるで冬のように澄んだ空気です。

そして、この日、塔ノ岳から見た富士山は雲海に浮かぶ富士山でした。これだけ澄んだ空気に、山荘の方いわく、夏にこれだけ澄んだ景色ときれいな雲海はそうそう見られないとのこと。

しばらく見とれていると、日の出がはじまりました。

空が真っ赤に染まっていきます。富士山からご来光を見ているひとたちは、僕たち越しにこの日の出を見ているのでしょうか。

日が出ると、富士山も赤く染まります。雲海に、赤富士。本当にきれいです。

そんな景色を見ながら、朝ごはん。たまごスープと五目ごはん。

食べ終わるころには、すっかり日も出て、夜が、朝になりました。ずっと景色を見ていたい衝動に駆られましたが、暑くなるまえに出発します。

出発。蛭ヶ岳へ。

5時半。山荘の方に挨拶をして、いざ。今日は体調もそれなりによさそうなので、思い切って丹沢山を経由して蛭ヶ岳まで向かいます。

丹沢山へは何度か行っていますが、蛭ヶ岳に登るのはまだ今日で2回目。しかも前回、こちら側へは降りただけで登りは未経験なので、どうなることか・・・と思いながら、塔ノ岳から丹沢山への縦走路を歩きます。

塔ノ岳→丹沢山

この縦走路は、非常に眺めがよく、山脈や沢の景色がきれいで大好きです。この季節になると、青々として冬とはまた違った趣ですね。

富士山の前にひろがっていた雲海も、日が昇ってしばらくすると霧散していきました。

涼しいせいか、水のペースに気をつけているせいか、昨日よりは楽に歩けました。丹沢山までは1時間で到着。

丹沢山→鬼ヶ岩→蛭ヶ岳

丹沢山の山頂で少し休憩を挟み、すぐに蛭ヶ岳へ向かいます。

1時間半ほど歩くと、鬼ヶ岩へ到着。ここまでくれば蛭ヶ岳まであと少しです。

蛭ヶ岳到着

鬼ヶ岩から30分ほどで、蛭ヶ岳に到着。前回きたときは展望がありませんでしたが、今日は絶景!富士山もよく見えます。

山頂には同じく泊まりでいらっしゃった方が数グループほど。ここまで来るころにはちょっと体力にかげりが見えてきました。やはりまだ万全ではないようです。

念のため、蛭ヶ岳では30分近い大休止を挟みます。このまま主脈をたどり西丹沢自然教室まで移動するか、塔ノ岳に戻るか、少し悩みますが、体力の状況を考えるに歩きなれた道で下山したほうがいいと判断。再び来た道を取って返します。

ふたたび塔ノ岳を目指して

装備を軽くするためにあまり水を積まなかった・・・というのもあるのですが、とにかく水の消費量が早く、蛭ヶ岳を出てしばらくするころには水が尽きかけていました。

そこで、蛭に向かう途中、不動の峰のふもとに水場の看板があったことを思い出し、ちょっとメインの道を外れて、水場へ向かってみました。

道はかなりの悪路。あまり人が通っていないことが伺えます。苦労しながら3分~5分ほど下ってみると・・・

不動の峰の近くにある水場へ、水を補給しにいこうとしたら、地すべりが起きていてこれ以上進めなかった。

完全に、がけ崩れで登山道が落ちていました・・・。

恐らく慎重に下ればいけないこともないのですが、もう体力的にはかなり余裕がない状態ですし、登りは下りよりはるかに難しいと思うので、残念ながら水はあきらめて、下ってきた悪路を戻りました。15分のロスは痛いです。

気を取り直して、丹沢山へ、そして塔ノ岳へと向かいますが、体力は既に限界に近いです。一日前のようにバテがひどく、つられて足もどんどん痛くなります。普段休憩を挟まないで歩けるような道も、時には30分近い休憩を挟みながら、ゆっくりゆっくり歩いていきます。これが慣れない道だったら・・・と思うとゾッとします。

大倉尾根から下山

想像以上に辛い大仕事でした。・・・書いている今も、実はそれほど正確に思い出すことは出来ないのですが、もう弱音しか出てこないし、登りの人よりも苦しそうに歩いていたと思います。すいすい歩く人が恨めしくなるほどでした。

休んでいるときも「しばらく夏山は絶対こない!もう山登りもいやだ!」なんて思ってしまいつつ(翌週また同じ山に登るわけですが)、なんとか3時間かけて下山しました。時間だけ見ても、明らかに登りよりかかっていますが、無事下山できればなによりでしょう。

ということで、はじめての一泊縦走は、無事下山にて終了しました。真昼間でしたが青空には月が浮かんでいます。下山後には、ずっと飲みたかったコーラ。歩く苦しみから、暑さから、山特有の不自由感から開放された喜びが、いつもの何倍にもなっておそってきます。

夏場のスタミナ管理、水の補給ペース、一泊縦走のよしあし・・・などなど、色々勉強になった点や課題点はありましたが、以前の主脈縦走の経験が生きたため、体調が崩れてからも比較的冷静にこなすことは出来た気がします。

もう夏場の縦走は懲り懲りですが、いまが既にそうであるように、きっとこの苦しみも忘れ、また向かってしまうことでしょう。

なによりも、あの星空と、日の出の光景が忘れられなくて。

2日分の文章にお付き合い下さいありがとうございました。おつかれさまでした。

【1日目】丹沢表尾根・一泊縦走 – 単独

7月17日。朝早起きしたら快晴だったので、兼ねてよりやってみたかった「丹沢塔ノ岳に泊まる、一泊縦走」をしてきました。

色々な要因が重なり、かなり辛い縦走になりましたが、この縦走で得た景色と経験は、しばらくの間忘れられそうもないものになりました。

丹沢へ

土曜日の朝。7時頃に自宅を出て、快晴の空を車窓から眺めながら小田急線で秦野へ。途中、乗り間違えに気づいて知らない駅で下車して引き返し。乗り換えで降りた駅から見た空がきれいだったので一枚撮影。

電車に乗り間違えて、戻るために降りた駅。なんか夏っぽい!

登りはじめ

初日のスケジュールは、丹沢で人気の表尾根縦走コース。ただし、ヤビツ峠からではなく、それより手前の蓑毛から歩きます。11時頃に蓑毛に到着し、これから登る山を眺めると、山頂付近はガスっている様子。案の定、登りはじめてしばらくすると、ほぼ霧の中になってきました。

蓑毛→ヤビツの道は歩きなれた道ですが、なぜかこの日はかなり息が切れる。暑さのせいか、天候で気が滅入っているのか、荷物の重さか・・・。なんとか蓑毛からヤビツまで1時間で辿り着くものの、残りの体力と距離を照らし合わせると、このあとが若干不安。

体調が悪くなると気持ちもネガティブになるもので、「早く到着しないと山荘に迷惑が・・・」とか「もし尾根道で雷が鳴ったら・・・」とか考え、どんどん思考が暗い方向へ追い詰められていきます。それでも、ヤビツ縦走は3度目。今までも恵まれた天候ではなかったので、その経験だけを支えに、ひたすら歩きます。

とにかくバテるバテる。今まで小走りで軽快に歩けたルートも、息切れしながら、休みながら、痛い足をさすりながら歩きます。本当になんだったんでしょう。今でもわかりません。恐らく水分補給のペースが悪かったのが一番の原因だとは思うのですが・・・。

ひと時の晴れ間

そんな感じで、ネガティブな気持ちと体調と戦いながら2時間ほど歩き、ようやく中間地点である烏尾山の頂上に差し掛かってきました。頂上に続く木のトンネルをくぐった瞬間、出迎えられるかのように、そらが一気に晴れました。

そして、景色。相模湾。そして山と海に挟まれた町並み。空と雲。そして鳶がその景色のなかをゆっくり飛んでいく。という、今までモニタ越しでしか見たことがなかったような、色々なものが詰まった景色。

烏尾山に到着した途端、つかの間の快晴に!

休憩を兼ねて景色をしばらく眺め、再び歩き始めます。休んだせいか、天気が晴れたから気持ちが晴れたのか、しばらくは軽い気持ちと足取りで歩けたのですが、また30分ほど歩くと景色は霧のなか。気持ちも体力もつられて下降。

正念場

蓑毛から歩きはじめて4時間、難所の鎖場を越えたころになると、体力も、足の痛みも、もう限界。痛くてつらくて、息を整えるのにも時間がかかるように。一度腰を下ろすとしばらく立てません。

難所の鎖場。今回はバテてバランス感覚が怪しかったのでいつも以上に慎重に。

そのうち、「展望もないし、星も見れないだろう。もう帰ろう。」とか「ここの非難小屋で一晩越そう」とか「電波が入るうちに山荘キャンセルしなくちゃ」とか「エスケープルートを取るとしたらどれぐらいかな」とか「もう夏の登山はいいや・・・」とか・・・本格的な諦めモードが顔を覗かせます。

ここで思い出したのは、前回主脈縦走をしたときに編み出した「自分を罵倒する」という気合の入れ方。「主脈はあんだけ歩けたのに今日はこんなもんか?」「前回来たときは楽勝だったじゃねーか」「これぐらい歩けないなら山登ってるとか言うなバーカ」とか、自分を罵りながら、砂だらけの道に腰を下ろし、足をさすり、時計とにらみ合い、登りはじめて5時間半の16時30分に、なんとか塔ノ岳に辿り着きました。

塔ノ岳山頂・尊仏山荘到着。

残念ながら、塔ノ岳山頂も展望はなし。

でも、ここまで辿り着けた達成感と、はじめての山小屋泊が出来そうだから、景色は今度でいいか・・・と言い聞かせながら、塔ノ岳山頂の尊仏山荘にチェックイン。

もうバテバテで食欲がゼロだったのと、非常食を少し大目に持っていたので、今回の宿泊は素泊まりにしてもらいました。夕食のカレー食べたかった・・・。

一休みして落ち着いたら、水を補充するために、山頂から5分ほど下ったことにある水場に湧水を汲みに行ってきました。水を汲み終わって、景色を振り返ると・・・。いつのまにか雲が晴れて、日の入りがはじまっていました。

日の入りと夜の景色

景色を見ながら山頂に戻ると、ほかの宿泊客の方も、山荘の方も、みんな屋内から出てきて日の入りを眺めていました。

このときはじめて知りました。山で見る景色は、そこにいたる過程とか、今まで登ってきた思いとか、そういうバックボーンがあるから特別に見えるんだと。

この日、何度も引き返そうと思ったこととか、足が痛くて本当につらかったこととか、今まで歩けていた道に苦労した悔しさとか、今まで何度も塔ノ岳に登ってその度に色々なことを勉強したこととか、そういう今までのものをすべて考えながら、景色を眺めました。

ほんとうにすばらしかった。

日が沈んでからも1時間ぐらい景色を前に立ち尽くしている間に、外は真っ暗に。

星は期待していたほど見えませんでしたが、もうちょっと深い時間に空の雲が晴れることを期待しつつ、富士登山客のライトの行列と、パノラマの大夜景をしばらく眺め、8時半ごろに就寝。はじめての山荘泊は、思った以上の快適さと山頂の涼しさも相まって、意外とすんなり寝付けました。

深夜、念願の星空。

深夜。

ふと目が覚めたので、こっそりと山荘を抜け出して外へ。空を見上げると、期待通りの満天の星空でした。

デネブ、アルタイル、ベガ。夏の大三角形に、アルクトゥールス、アンタレス。カシオペアにアンドロメダにペガスス。その他知らない星や結びきれない無数に星に流れ星。ずっと僕が見てみたかった光景でした。

そもそも、登山をはじめたきっかけは、この星空を見るための天体観測の一環。いまや動機が逆になっていますが、去年からの念願がようやく達成されました。

「山に登って、その日一番感動したものは写真に残さない」という僕のポリシーにより、星空の写真はありません。でも、この日再び眠りにつくときに目を閉じると、瞼の裏にはしっかりと景色が焼きついていました。それは今も同じです。

そんなかけがえのない、今までの山行でもっとも感動した景色によって一日目を終え、二日目へと続きます。